GitHub Archive Program: アーカイブを美しいものに

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1年前のGitHub Universeで、GitHub Archive Programを発表しました。その使命は、将来の世代のためにオープンソースソフトウェアをアーカイブ(保管)することです。世界の基盤はオープンソースソフトウェア(OSS)であり、オープンソースコミュニティのすばらしい業績を保存するために対策を講じるという、大きな責務が私たちにあると考えました。その対策の1つが、ノルウェーのスバールバル(Svalbard)にあるArctic World Archive内に設置したGitHub Arctic Code Vaultです。今年の夏、186リール(巻)のpiqlFilm(デジタル感光性アーカイブフィルム)と21TBのリポジトリデータを、永久凍土の地下250メートルに保管しました。これは、GitHub Archive Programの大きなマイルストーンであったと同時に、第一歩にすぎません。皆さんのコードが辿った旅の全容は、こちらでご覧ください。

Arctic Code Vaultに続くプロジェクト

GitHubは、継続的な保存の取り組みの一環として、重要なオープンソースプロジェクトをさらに4ヶ所に保管することを決定しました。対象となる重要なオープンソースプロジェクト「Greatest Hits」は、piqlFilmに転写された現在GitHubで最も人気があり依存関係が多いオープンソースリポジトリ、さらにその他のリポジトリからランダムに選んだ約5,000件のサンプルを収集したものです。これらによって未来の歴史学者は、現在の開発者が構築した広範囲にわたるプロジェクトについて理解を深めることができます。新しいソフトウェアプロジェクトの99%がオープンソースに依存している中で、対象となる17,000件のリポジトリは現在のテクノロジーの基盤となるものです。これらの重要なプロジェクトにアクセスしやすくするために、LOCKSS(Lots Of Copies Keep Stuff Safe)の原則に従って、「Greatest Hits」を4組作成し、世界各地に分散させました。

GitHubは、これらの「Greatest Hits」を、世界有数の知識の門番である3つの拠点に寄贈することにしました。英国オックスフォード大学のボドリアン図書館、エジプトのビブリオシカ・アレクサンドリナ(通称:アレクサンドリア図書館)、そして米国カリフォルニア州のスタンフォード図書館です。各拠点に寄贈されたのは、Arctic Code Vaultに保管したものと同様の堅牢なマイクロフィルムであり、AIが作成したアートワークを3D印刷した美しい芸術的なケースに2リールが収められています。さらに、4つ目のケースはGitHub本社で保管し、展示する予定です。

オックスフォードのボドリアン図書館は、ヨーロッパにおいて特に歴史の古い図書館の1つです。何世紀にもわたって人知を収集し、保護してきました。そのアーカイブには、1,000年前よりはるかに古い写本が含まれています。

ボドリアン図書館の司書、Richard Ovenden氏は次のように述べています。「GitHub Archive Programに参加できることは光栄であり、名誉なことです。知の保存は、ボドリアン図書館だけでなく、社会全体にとって非常に重要です。このデジタル時代において、ソースコードのように極めて重要な情報の新たな保存方法を、常に探し求めなければなりません。過去を保護・管理する存在である司書やアーキビストは、未来に対する前衛部隊でもあります。私たちのコミュニティは何年にもわたり、ソフトウェア開発やデータプラクティス、学術コミュニケーションに対するオープンなアプローチを発展させてきました。その結果、オープンソースソフトウェアを確実に保存するには、GitHubや世界中の他のパートナー図書館にとって、ボドリアン図書館が、最適なパートナーであると思っています」

アフリカで傑出した図書館であり、伝説の古代アレクサンドリア図書館を現代に継承したビブリオシカ・アレクサンドリナは、知の創造と普及はもちろんのこと、文化や人々の対話・学び・相互理解の中心地です。また、Internet Archiveのパートナーでもあります。その使命は、世界中の膨大な数のコラボレータが構築したプロジェクトに力を与えるGitHubの仕組みと、非常に調和するものです。

ビブリオシカ・アレクサンドリナのディレクター、Mostafa El Feki氏は次のように述べています。「2002年に新アレクサンドリア図書館として開館して以降、ビブリオシカ・アレクサンドリナは、将来の世代のために遺産を保存することに尽力しています。そのために、Webアーカイブの作成や書籍のデジタル化、立体人工物のデジタル化など、複数の取り組みを展開してきました。それ故に、GitHubと協力して、非常に貴重な人類の遺産をまた1つ保存できることを嬉しく思います。その遺産こそ、現代社会が依存する多くのテクノロジーの原動力である、オープンソースソフトウェアです」

シリコンバレーの中心部に位置するスタンフォード大学のスタンフォード図書館は、膨大で多岐にわたる知識を物理的な形式とデジタル形式の両方で収蔵していることから、長きにわたりデジタルアーカイブと研究の最前線を突き進んでいます。

アーカイブにおける美しさの重要性

1月の諮問会議において、諮問委員会からアーカイブを美しくする必要性に関する意見が共有されました。委員会の説明によれば、人は時間の経過とともに、視覚的に魅力的で知覚価値があるものを保存する傾向が高まります。この点について、Long Now Foundationのエグゼクティブディレクター、Alexander Rose氏は「美しくしなければ、確実に消える運命にあります」と表現しています。私たちはこのアドバイスを真摯に受け止め、美術館レベルの品質をもつ4つのケースの制作をAlex Maki-Jokela氏に依頼しました。同氏はアーティスト兼エンジニアであり、その作品は伝統的な美学と、3D印刷やAIが作成したアートを融合させています。

同氏は次のように語っています。「芸術的な美しさを持ちつつ、オープンソースソフトウェアの精神や、オープンソースソフトウェアの基盤である科学・エンジニアリングの時代への敬意を表するものを制作したいと考えました。ケースの制作に使ったソフトウェアや3D印刷ツールの技術は、現時点で利用可能なほぼ最先端のものであり、その多くの技術的な象徴は、過去数百年にわたるエンジニアリング分野の人類の進歩を表しています。しかし、アートワークの裏にあるテクノロジーの形が変わったとしても、過去の遺産となることと同時に、数百年後も変わらないストーリーを表現しようとしました

Alex Maki-Jokela氏が、その過程についてこちらに記載しているので、ぜひご覧ください。

2021年も、GitHub Archive Programの最新情報をお見逃しなく!