Good DevEx increases productivity. Here is the data.

卓越したDevExが高める生産性

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お待たせしました、私たちはついに、開発者エクスペリエンス(DevEx: Developer Experience)のメリットを裏付けるデータを得ることができました。本ブログで詳しくご紹介します。

開発者が複雑なタスクを解決し、仲間と協力し、創造性を発揮できるよう、卓越したDevExを提供することがビジネスの賢明な手段であるのは自明の理であり、お客様からもずっと同じことを聞いてきました。

にもかかわらず、DevExに関する会話において、経営幹部が「DevExを改善すると得られるビジネスメリットをデータで示せるか?」と問いかけると、その話は終わっていました。これまで、事例となる証拠はあっても、この質問に対して満足のいく答えとなるデータはありませんでした。GitHubが今回発表した新たな調査では、DevExの主な要素であるフロー状態、認知負荷、フィードバックループが、生産性の向上とイノベーションの推進により、個人、チーム、組織の成果にどのような影響を与えるのか、統計分析を用いて示しています。

この調査を実施するため、GitHubはDevEx測定を支援するDX社と提携し、同社による洞察と専門知識を活用しました。ワークデザイン理論を用いて仮説を立て、質問を作成し、さまざまな業界の20社以上の企業を調査しました。どの指標が有効かつ有意であるかを確認するため、厳密な統計分析を行いました。また、この調査を第三者が再利用できるよう調査に使用した質問を文書化し、DevExを推奨して結果を測定する方法について、順を追ったガイダンスも提供しました。

その結果、以下のようなエビデンスに基づく成果やアドバイスが得られ、世界中のビジネスリーダーがDevExに投資するための論拠として活用できるようになりました。

– Eirini Kalliamvakou博士、GitHubスタッフリサーチャー、本調査共同執筆者

Graph showing what businesses get with better DevEx: by blocking time for deep work, they get 50% more productivity; by creating intuitive processes, they get 50% more innovation; and by enabling fast code reviews, they get 20% more innovation.

フロー状態を高める

調査の結果、深く集中して業務を行う時間を大幅に確保した開発者は、生産性が50%向上することが明らかになりました。価値の高い仕事をするには、Slackのメッセージ、ミーティング、同僚からのヘルプ要請など、仕事の妨げとなるものを最小限に抑え、フロー状態に留まることが極めて重要なのです。確かに、まとまった時間を確保するのは簡単なことではありません。チーム全員が同一のタイムゾーンにいない場合は特に大変です。しかし、開発者がフロー状態を最大化できる環境を提供することが、ビジネスの利益につながります。

GitHubのスタッフリサーチャーで、この調査の共同執筆者であるEirini Kalliamvakou博士の見解は次のとおりです。「コーディングを最適化するには、適切な環境が必要です。開発者がフロー状態に入り、その状態を維持できるようにする方法を導入することは、勝利への近道なのです」

Adobeは、開発者に効果的な作業環境を提供することの価値を認識しています。Adobeの開発者生産性担当シニアPMを務めるCJ Dotson氏は、次のように指摘しています。「テクノロジーを売るビジネスをしているなら、DevExへの投資は必須です。AdobeのDevExへの投資は、開発者の満足度とビジネス成果の向上につながっています」

さらに、調査では、仕事に魅力を感じている開発者は、生産性を30%高く感じているということが分かりました。この統計は、組織がタスクの配分を見直す際に役立つはずです。燃え尽き症候群につながるようなあまり好ましくないプロジェクトに、同じ開発者を従事させ続けていませんか?あなたのチームは、退屈なタスクや会社のミッションからかけ離れた作業を繰り返していませんか?彼らの仕事を最適化したいのであれば、チームが少なくともほとんどの時間、自分が担当するプロジェクトにワクワクできるようにしましょう。

Microsoftのパートナーリサーチャーであり、この調査の共同執筆者でもあるNicole Forsgren博士は、「深い仕事と刺激的かつ魅力的なプロジェクトに従事してもらうことは、生産性を高めるために企業ができる特に大きなことの1つです」とコメントしています。

認知負荷の軽減

似たパターンとして、自分が作業しているコードを高度に理解していると答えた開発者は、理解度が低いかまったく理解していない開発者よりも、42%高く生産性を感じています。理解度の低さは、ドキュメントの不備や古さ、オンボーディング不足、AIによる急激なイノベーションなど、さまざまな要因から生じます。

「開発者なら誰でも、コードやそのコンテキストをよく理解できないことにフラストレーションを感じた経験があるはずです」と、Forsgren博士は言います。「非常に多くのコードが相互接続され、複数の開発者によって開発されているため、『理解しやすさ』は卓越したDevExを持つことが非常に重要である理由の一つです」

Kalliamvakou博士はまた、優れたツールの出番となるのはここだと指摘します。「GitHub Copilotのような新たなテクノロジーは、開発者がコードをより深く理解することを助け、生産性の向上を支援します」

また、直感的で簡単なプロセスがイノベーションを促進する一方、煩雑なプロセスが時間を浪費し、フラストレーションを生むのは当然のことです。私たちの調査によると、直感的なプロセスを持つ開発者は、自らを50%高く革新的だと感じています。

Forsgren博士は、こう付け加えます。「これは必ずしもテクノロジーだけの話ではありません。開発者にとって摩擦や障害となるものを取り除く方法がわかれば、多くのものを解き放つことができます」

Etsy社のエンジニアリングディレクターであるDermot Russell氏も、これに同意しています。「Etsyのイネーブルメントイニシアチブは、開発者の日々のエクスペリエンスを向上させると同時に、組織の成長に合わせた迅速なソフトウェア提供も可能にしています」

フィードバックループの改善

ソフトウェア開発の世界では、効率的なフィードバックループが不可欠です。調査によると、コードの納品までの時間が短いと回答した開発者は、そうでない開発者よりも20%革新的だと感じています。「フィードバックを速やかに得ることで、好奇心や意欲を維持したまま、迅速に作業を進めることができるのです」とKalliamvakou博士はコメントしています。「開発者はフロー状態を維持し、次のすばらしいものを生み出すことができます」

フィードバックループの改善に注力することは、組織全体の有効性だけでなく、開発者の満足度にもプラスになります。例えば、UKGのデベロッパーアクセラレーション担当VPのThomas Newton氏は、次のように話しています。「開発者の日常業務から摩擦や無駄を減らすことで、高品質なソフトウェアがより早く出荷されると同時に、幸福度やエンゲージメントも向上するという好循環が生まれます」

迅速なフィードバックループには、もう1つメリットがあります。開発者の質問に対してより短い時間で回答するチームは、技術的負債が50%少なくなっています。つまり、優れたドキュメント作成は利益を生むということです。開発者からのよくある質問を文書化し、必要な回答を簡単に見つけられるツールを導入することで、開発者はアジリティ(俊敏性)を高めることができます。

結局のところ、機敏な開発者が俊敏なチームと組織を生むのです。

Forsgren博士はこう付け加えます。「開発者はフィードバックを待たなければならないことがよくあります。作業が中断され、常に足止めされます。面倒なプロセスを考えなければなりません。ですが、その代わりに、すぐにコラボレーションでき、作業が中断されず、直感的なテクノロジーを使って、フロー状態に身を置くことができれば、問題を解決し創造性を発揮して、仕事を成し遂げることができます。これは、チームと組織全体にメリットをもたらします」

今後の見通し

ソフトウェアの開発はイノベーションに欠かせません。あらゆる業界において、企業は目標を達成するために、高品質のソフトウェアを開発して維持する必要があります。そのため、DevExへの投資は必須です。

Kalliamvakou博士は、最後に「もしあなたが収益性と革新性を重視するビジネスリーダーなら、卓越したDevExを実現することは、あなたが自由に行える重要な手段の1つです。今回公表した調査結果は、ようやく、より大きなコミュニティにこのことを訴えるために必要な、信頼できるデータとエビデンスを与えてくれました」と締めくくりました。