GitHubは、6月27日(米国時間)、カナダのトロントで開催されたCollision カンファレンスにおいて生成系AIを搭載したソフトウェア開発者ツールが経済と生産性に与える影響に関する画期的な発表を行いました。発表の中で紹介された調査で、AIを活用することで、開発者の生産性が向上し、世界のGDPを1.5兆ドル以上も押し上げる可能性があることがわかりました。
約1年前、私たちは世界に向けてGitHub Copilotをリリースしました。世界中の開発者を対象に、世界初の大規模なAIペアプログラマーを導入したことは、当時、未知への飛躍かのように感じられつつも楽観的かつ用心深く見守っていました。しかし今、リリースから1年で、ソフトウェア開発に起きた大きな変化を目の当たりにし、私はこのテクノロジーの高い将来性を確信しています。
現在、GitHub Copilotは世界で最も広く採用されているAI開発者ツールです。100万人以上の開発者によって有効化され、2万以上の組織で採用されており、これまでに生成されたコードは30億行を超えました。
生産性の分析から、GitHub Copilotが開発者の幸福にどのように影響するかに至るまで、私たちは研究を重ね、モデルの改善と適応を続けながら学んできました。GitHub Copilotのリリースから1年という節目に、私たちがこれまでに得た主な洞察と、6月27日に公開した最新調査(AIを活用した開発者ライフサイクルがもたらす経済効果など)についてご紹介します。では、始めましょう。
生成系AIはソフトウェア開発に大きな変化をもたらす
GitHub Copilotは開発者の生産性を大幅に向上させます。GitHub Copilotユーザーの大規模なサンプル(n = 934,533)を分析した結果、生産性にかなり大きな影響があることが明らかになりました。平均してユーザーは提案されたコードの約30%を承諾しており、それにより生産性が向上したと報告しています。さらに、時間の経過とともに開発者がツールに慣れてくると、コード提案の承諾率は着実に上昇することが分かりました。このことから、ユーザーがGitHub Copilotを活用したソフトウェア開発に慣れるにつれて、開発者の生産性に影響を与え続ける可能性が大きくなると考えられます。
AI開発者の生産性向上により、世界のGDPが1.5兆ドル以上増加する可能性があります。2030年にはプロフェッショナル開発者が4,500万人になると予測されています。生成系AIの開発者ツールによって生産性が30%向上した場合、2030年には 「実動可能な開発者」 1,500万人分の生産性向上が、世界中の生産能力に加わる可能性があります。これにより、この1つの作業者グループ(実動可能な開発者)が生み出す経済活動の恩恵として、世界のGDPが1.5兆ドル以上増加すると試算されました。さまざまな開発者ツールの歴史がそうであったように、ソフトウェアと開発者に対する需要が増加する見込みが高く、開発者がソリューション設計にAIを活用し、世界中でデジタル変革を加速させる新たなチャンスを掴むことで、こうした生産性の向上は今後も多大な影響をもたらすと考えています。
経験の浅い開発者はGitHub Copilotからより大きな恩恵を獲得できました。この調査により、経験の浅い開発者は、GitHub Copilotのようなツールを活用することで、非常に大きなメリットを得られることもわかりました。この考察は、AIが開発者の生産性に与える影響に関する私たち自身の過去の実験を含む、他の調査によって裏付けられています。開発者がこれらのツールを使ってスキルアップすることで、プロンプトやAIとのやり取りにさらに精通し、開発ライフサイクルが強化されます。これにより、さらに多くの人々に対して「ソフトウェア開発」という作業が一般的なものになり、労働力の格差が解消され、AIペアプログラミングツールを標準的な開発者教育の一部として確立することができます。
GitHubはAI時代のエンジニアリングシステムです。この最新の調査では、オープンソースイノベーションの急増についても調べました。GitHub上のAIリポジトリのエコシステム分析によると、生成系AIに取り組んでいる人々は、大手テクノロジー企業から個人まで多岐にわたります。また、GitHubリポジトリとコミットに関する私たちの分析では、生成系AIプロジェクトを中心とするオープンソースの活動が飛躍的に増加しており、GitHub上のオープンソース開発者がAIイノベーションの次の波を牽引することを期待しています。
仕事が速く、幸福度の高い開発者
以前の調査では、承諾率だけではなく、開発者がGitHub Copilotを使用してタスクを完了するスピードについても調べました。例えば、ある定量的調査では、GitHub Copilotを使用する開発者は、タスク完了が55%も速いことがわかりました。さらに、GitHub Copilotが有効になっているファイルでは、コードの46%がGitHub Copilotで完成されたことが初期の調査でわかりました。これらはすばらしい数値ですが、「生産性のための生産性」には何の意味もありません。私たちは、開発者を幸せにするためにGitHub Copilotを作成しているのであり、これこそ、GitHub Copilotの本来の目的です。
開発者を幸せにする」という点でも、GitHub Copilotは成功しています。ある調査では、開発者の75%が「GitHub Copilotの使用時に充実感を覚える」と回答しました。別の調査では、開発者は「AIコーディングツールの最大のメリットはコーディング言語スキルの向上である」と回答しています。また、これにより、「さらに前向きに仕事に取り組めるようになる」とも述べています。生産性も満足度も高い、より能力が高い開発者。これがまさに、GitHub Copilotが目指すところです。
GitHub Copilot for Businessによる影響
今後10年間における生成系AIの経済効果は、極めて大きなものになるはずです。すでに開発者や企業によって、GitHub CopilotなどのAIコーディングツールが大規模に導入されています。最近の調査では、開発者の92%が「AIツールを業務内外で使用している」と回答しています。この結果は、AIツールが開発者エクスペリエンス全体をいかにすさまじい速さで再定義しているかを証明しています。
今年初め、私たちは、ソフトウェア開発にGitHubを使用しているかに関係なく、あらゆる規模の企業に生成系AIのパワーを提供するために、GitHub Copilot for Businessをリリースしました。リリースからわずか3か月後の時点で、すでに1万社以上の組織がGitHub Copilot for Businessを採用しており、現在では2万以上の組織が利用しています。
そして、GitHub Copilotを活用している組織は、実際に成果を上げています。たとえば、Duolingoのエンジニアリングチームは、GitHub Copilot for Businessを使用して、開発速度の25%向上を達成しました。DuolingoのシニアエンジニアリングマネージャーであるJohnathan Burket氏は、「GitHub Copilotを使用することで、開発者はコードライブラリーまたはドキュメントを探し回るのではなく、フロー状態を維持し、勢いを保つことができる」と述べています。
この他にも、GitHub Copilotを使用したソフトウェア開発業務のテストを採用応募者に課す組織が増えており、AIペアプログラミングが応募者をテストするための標準ツールになることを示唆しています。つまり、生成系AIツールの「使い方」 を習得することが、ソフトウェア開発者のコアコンピテンシーになる日も近いということです。
切っても切れないつながり
これまでの調査から分かったのは、生成系AIが開発者の生産性を飛躍的に向上させ、その結果、世界経済のGDPの急成長を促進させ、そしてソフトウェア開発者の需要を急増させるということです。私たちは、コンパイラーからオープンソースに至るまで、さまざまな開発者ツールのイノベーションの歴史を通して、こうした状況を目撃してきました。また、GitHub CopilotとGitHub Copilot Xでも、すでに同じことが起こっています。リリースから1年が経ち、AIとソフトウェア開発者の衝突は開発者の仕事の減少につながるものではなく、むしろAIが開発者の可能性を増大させ、人類の進歩を加速させます。
より多くの開発者が生成系AIツールを採用し、Copilot機能でスムーズにプロンプトできるようになるにつれて、この新しいソフトウェア開発方法が人類とAIの間に切っても切れないつながりを生み出し、今後何世代にもわたる世界中のソフトウェア開発方法を決定づける可能性が高いことは明らかです。
そして、そのおかげでより良い世界になるでしょう。
生成系AIによる経済効果の詳細
Keystone.AIと共同実施した生成系AIの経済効果に関する最新調査を公開しています。また、Collision カンファレンスでの発表はオンデマンド録画でもご覧いただけます。